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ギターの音と構造の関係 #019 「現代におけるブリッジとペグのバリエーション、フロイドローズトレモロユニットについて」

  • minashunta
  • 2016年10月11日
  • 読了時間: 6分

前回はスタンダードなストラトに搭載されているブリッジとペグの違いにおけるサウンド面への影響を解説しました。

今回は、さらにモダンなスタイル、ストラトから派生していった現代の様々なギターに搭載されているものについて考えていこうと思います。

・フロイドローズトレモロユニット

1977年に開発され、80年代のハードロックギターシーンに大きな影響を与え、その功績は計り知れません。

フロイドローズトレモロユニットが無ければ、

エディ・ヴァン・ヘイレンもあそこまでアーミングプレイをしていたか、もっと苛ついていたかも?なんて思います。

そうですね、エディ・ヴァン・ヘイレンについて掘り下げることで、サウンドやプレイへの影響を考察してみましょうか。

このページを見る限り

初代のフランケン(白黒)はシンクロトレモロで、1974年に作ったとか。

1977年にIbanezデストロイヤーを元にしたギターを作っているものの、ブリッジはTune-O Matic。

78年に購入したであろうギターに、フロイドローズトレモロユニットを後から載せ、80年のツアーで使用したようです。

ここから得られる答えとして、

1.エディは相当に早くフロイドローズトレモロユニットを取り入れていた。

2.78年のデビューアルバムのEruptionは初代フランケンによるシンクロトレモロでのプレイだったことが濃厚。

それらを踏まえて聞くと面白いです。スゴイですね。

チューニングをし直すためにフレーズごとに切って録音したような構成なのかな、というようなことも連想されます。

「1984」なんかはフロイドローズトレモロユニットも全盛期というか、

有名な赤黒の二代目フランケンなんかもバリバリこの頃使ってるのかな、とおもいきや。

1984年のライブでは、Kramerのシグネチャー使ってますね。ただ、もちろんフロイドローズ搭載。

Van halenについては詳しい方が星の数ほどいますので、そちらにおまかせします。

ググりゃある程度でてきますので。

ここで大事なのは、ブリッジとサウンドのお話...とういことで。

シンクロトレモロよりも、質量の多い、重いブリッジは、サスティーンにも優れます。

トレモロユニットというとそれまでは、サスティーンにすぐれない物が多いです。

Jazzmasterのフローティングトレモロしかり、ムスタングのダイナミックトレモロしかり。

その点シンクロトレモロはサスティーンブロック(ウラの鉄の塊)を着けることにより、

ある程度のサスティーンを得ることが出来ています。

(ちなみにストラトにはフローティングトレモロに近いものが搭載される予定だったが、サスティーンが得られないということでシンクロトレモロが急遽開発された、と言う話もあります。)

さらに、1954年発売当時はトレモロ(揺らす)ために使うこと前提だったため、1960年後半のJimi Hendrixに始まる激しいアーミングなどは想定外なわけで。

恐らくミュージシャンは激しいアーミングをすることによるチューニングの狂いを痛感していたことでしょう。

そんな中開発されたフロイドローズトレモロユニット。

音楽もハードロック全盛期。強いシナジーから生み出された「時代」を感じます。

・構造について

まず、使ったことがある方はわかると思いますが、弦をブリッジとナット部分でロックしてしまいます。

手順としては、

1.ブリッジ側で弦をロックして取り付ける。

2.通常のギターと同じくペグに巻いてチューニングする。

3.ある程度あった所でナットでロックし、ブリッジ側のファインチューナーで調整する。

4.以後、基本的に弦交換のとき以外はロックを外さないでファインチューナーのみでチューニングする。

といった感じになります。

・サウンドについて

チューニングの安定度のための機構ではあるのですが、サスティーンにも優れます。

弦の鳴りがそのまま=実音がハッキリしていて倍音が少ない、といったイメージです。

木材の種類による影響等を受けづらいため、ピックアップやアンプでの音作りをしやすいと言う利点もあります。

1980年代は、ラックシステムやアクティブピックアップが発展していった時代でもありますが、

そういった音作りとの相性も良かったでしょう。

ギターメーカーもそういったところを意識して設計されているギターが多いように思います。

(ネックを薄くすることの鳴りが悪くなる、というデメリットをハイパワーのピックアップでカバーする設計のIbaezなど)

ペグの話もしたいところですが、ロックナットの場合はほとんど影響がありません。

というかヘッド周りを他と比べたときに、一番剛性の強い作りである、という認識をしてもらえればいいと思います。

逆に言うと、真空管アンプを使ったシンプルな音作りはしづらいですし、普通のストラトなんかのほうがギターらしい倍音を含んだサウンドになるので、ジャキーンと弾くコードバッキングなんかはあまり向いてないように思います。

実際弾いてみれば、そのあたりはわかりますが、

気持ちよくプレイできるジャンルと、どうも楽しめないジャンルがハッキリ分かれます。

聞いてるぶんにはあまりわからないことなのですが、どうしてもギタリストとして「気持ちよくない」という感覚が残ります。

やはり、フロイドローズトレモロユニットを使用したハードなアーミングや、チョーキングプレイをするため、

というプレイアビリティありきのトレモロユニットであり、リードギター向けのギターになります。

チューニングが安定していてサスティーンに優れる、と言っても誰にでも優しい万能なギターというとそうでもないわけで、若干ビンテージ思考寄りの音作りが主流である現代では、やや限定的な用途という立ち位置になっているかな、と個人的には思います。

また、当時はケーラーをはじめとして、フロイドローズの後追い的なトレモロユニットが多く開発されましたが、

その多くは淘汰され現代までは残っていませんので、ここでは割愛させていただきます。

次回はWilkinsonブリッジとロック式ペグについて、お話します。

追記。

フロイドローズトレモロユニットってあまり、

ギターの鳴り自体が良いイメージがないと思います。

僕も実際そうだったのですが、自分で一本改造したり、製作の先生が作ったフロイドローズギターを弾いたりということで、

鳴りがいいモデルもあるのだと知ったことを思い出しました。

楽器屋さんでも、たまにいい鳴りのものがあります。

Bacchusの2009年ギターショーモデル、定価で27万くらいのものが、中古で8万程度だったんですよね。

ちょうどこういった仕様のギターを探していた時期でした。

ただ、ファーストインプレッションが良くなくて、楽器屋さんに弦交換と、ネック調整、シムを噛ませてもらう、などを頼んで...と言った感じ。

(結局ボクは買わず、似たような仕様を探していた友人がたまたま居たので、おすすめして彼が買いました。)

やはり、多機能から来る調整の難しさは大きいのかもしれませんし、

そもそも「フロイドローズトレモロユニットはこういう音」

みたいに諦められているのかもしれません。

なのでなかなか知ることが難しいというか、出会いも少ないと思いますが、ラッキーなことに確実なものがあります。

Freedom Custom Guitar ResearchのHydraはレギュラーでフロイドローズトレモロユニットのものもあるので、ちょっと探せばあると思います。

「生鳴りもちゃんとしてくれるフロイドローズ」に興味がある方は探してみてください。

 
 
 

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