ギターの音と構造の関係 #018 「ストラトにおけるブリッジサドルとペグの違い」
- minashunta
- 2016年10月7日
- 読了時間: 4分
・ 前置き
ストラトのパーツ、ブリッジサドルとペグの違いについてです。
ペグもサドルも、大きく分けて2つあります。
軽いビンテージタイプのものか、重いモダンなタイプのもの。
・ペグについて

ビンテージタイプとも言われる、軽いもの。
6連のクルーソンタイプです。
ストラトと言えばこれが基本です。
金属の板を曲げて組み合わせて作られていて、
軽く出来ています。
取り付けも下からネジで止めるだけなので、
あまりガッチリとヘッドに付いているわけではありません。
古いものは悪くなりやすいですが、
今のものは性能いいです。
サウンドは軽やかで、倍音のある広がりのある音。
ネック、ヘッドにおける金属の比率が少なくなるため、木材自体の鳴りが結果的に活かされます。

対して、モダンで、重い、ロトマチックタイプ。
型の中に金属を流し込んでいるので、
重く出来ています。
ノブの横にあるネジの締め具合でトルク(回すときの固さ)が調整できるなど、
クルーソンタイプには無い性能がウリです。
また、上からもナットで締め込む形で取り付けるので、ヘッドに対してガッチリと固定されています。
サスティーンに優れるようになります。
ヘッドにしっかり重りがついている状態になるので、
倍音が抑えられ、弦の実音がハッキリ聞こえるようになります。ただ、軽やかさは失われます。ハムバッカーを載せたり、と言ったリードプレイに向くと思います。

・ブリッジサドルについて
こちらもペグと同じく、
金属の板を曲げて作られているので、軽く出来ています。
曲げて作られていることの意外な副産物として、
高さ調整のイモネジがズレにくい、というのがあります。
弦が張られると、加わり少し歪むので、それでズレにくいようです。
サウンドは軽やかで歯切れのよい音。
素材の違いも大きいです。
基本の鉄(steel)が適度な粘りがありいいと思います。

次に、モダンなタイプ。
こちらも鋳物(ダイキャスト)です。
重く、ガッシリとした作り。
物によりけり、また調整の具合にも寄りますが、
イモネジがずれやすいという話を聞くことはあります。
きちんと全体が調整されていれば、ズレないので大丈夫ですが、中国製の安物だとズレやすいと思います。
輪郭がハッキリとし、バンドの中で音が埋もれず、前に出るようになります。
やはりリードプレイに向いていると思います。
繊細なピッキングができないと、
特にカッティングなどをしたときなど、
うるさく、野暮ったく聞こえることもあり、
上級者向けのサドルだと思います。
FenderだとAmericanDeluxe、現行のAmerican Eliteにはこのタイプのサドルが搭載されています。
また、こちらのほうがヴィンテージタイプよりも金属の比率が大きくなるため、素材による違いも大きくなります。
チタンなどは最近評判がいいですが、やはり鉄のサウンドを知った上で取り付けるべきだと思います。
・歴史的な話をすると
昔はヴィンテージタイプしかなく、あとからモダンなペグやサドルが開発されていきました。
性能的に物足りない点を補ったり、もっと丈夫で安定した物に、という設計思想が感じられます。
当時は性能的な不安を抱えた製品が多かったため、もっと安定してライブで使うために、と言う選択だったのでしょう。
なので、サウンドの変化は副産物的なものだったわけですが、
現代ではヴィンテージタイプでも、GOTOH製品などは性能がいいものもたくさん選択肢にあるので、
サウンドを基準に選ぶことが出来ます。
・総括
ストラトはピックアップや木材の違いに目が行きがちですが、こういったペグやサドルの違いも注意してみることで、
そのギターの持つサウンドの特性をより深く理解することが出来ます。
例えば、ペグとサドルはビンテージタイプのままでハムバッカーピックアップを載せたとしても、
サスティーン特性が良くないため、思ったような音にはなりません。
ペグやサドルはギターを買うときにあまり注目されず、故障して初めて交換することが多いとは思いますが、
あまり値段も高くないので、音作りの観点で積極的に交換することもいいと思います。
ただ、そのときはもともと付いていたサイズに要注意。
ペグの取り付け穴の大きさが違って、性能が発揮されないといった例はよくあります。
ノギスで図って、ホームページをよく見て、注文しましょう。
次回は、通常のストラトから派生していった、トレモロ・ユニット、ブリッジ、また現代のペグと、そのサウンドについてお話します。
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