突撃!隣のギターメーカー #001Freedom Custom Guitar Research
- minashunya
- 2015年6月23日
- 読了時間: 9分
新シリーズ、「突撃!隣のギターメーカー」です。
半分くらい試奏日和、半分くらいメーカーさんの特徴を僕からの視点で、というシリーズになると思います。
(当たり前ですがちゃんとアポ取って、じっくり訪問しますよ。笑)
第一回は、東京、町屋にあるFreedom Custom Guitar Research。(以下FCGR)
最近出来上がったというショールームへお邪魔させていただきました。
今回FCGRに行きたいと思ったのは、色んなhydraを弾きたい、ということから。
もとを正せば3年前に某楽器屋でhydraの1stロットを試奏したときに、新しいギターのバランス感覚を貰ってびっくりしたわけで。
モダンなギターってよくわからなかったのですが、ウィルキンソンブリッジと比重の高いペグの組み合わせの気持ち良さを教えてもらいました。
それから、色んな楽器屋に行く度に、hydraがあれば必ず弾くようにしています。
でも、なかなか弾いてみたい仕様がなく…。
ということで、ショールームを楽しみにしていたのですが、残念ながら僕の欲しい仕様のhydraは在庫にないとのことで。
hydra classicを二本とRRを二本とpepperを一本弾かせていただきました。
(ちなみに僕の欲しい仕様はトップにメイプルを張った通常のHydraの24F、2pointウィルキンソンブリッジ。)
まず弾かせていただいたのはhydra classic。
hydraの一年後くらいに発表されたのかな?
トップにメイプルを貼らず、ペグもクルーソンタイプのロック式。
と言った違いがあり、その分価格も少し控えめ。
今回はアッシュボディとアルダーボディの二本。
アッシュボディから弾かせていただきました。
やはり持って握った感じがしっくりきます。
というのもフレットの仕上げ精度の高さなどが素晴らしいので、演奏面ではとにかくストレスフリー。
結論から先に言うと僕はアルダーボディの方が好きでした。
中域の粘りがしっかりある感じ。
アッシュボディでメイプルネックのモデルも弾いてみたいです。
Hydraの面白いところ、全体的に共通しているポイントは、アッセンブリとジョイント。
まずアッセンブリ。
フリーダムオリジナルのハイブリッドハムバッカーを含むHSH。
これがとてもうまくできてる。
ポットでタップの具合を調整出来るわけですが、それがとても使いやすい。
リアとハム、どちらかをシングルにしたい、または7割くらいタップしたい、とか。
わがままな設定も使いやすくコントロールできるようになってます。
ハイブリッドハムというのは、シングル状態の使いやすさを重視したハムとのこと。
ハムをメインで設計していると、タップ状態というのは往々にして薄い音になってしまうという。
ある意味その音が好き、と言う人もいるかもしれませんが、それはちょっと特殊というか。
シングルとして普通に使えて、なおかつハムもあるよ!みたいな感覚に近いかも。
そして、ジョイント。
ご存知の方も多いと思いますが、ARIMIZO1point jointという機構です。
トルクマネージメント、という概念は4点止めの普通のネックでも当たり前に行われて来たことですが、それは技術者間の話で一般のユーザーではネックを外したこともない人が大半ですよね。(そうでもない?)
でも、4点止めの締め具合を調整して、なおかつ狙ったサウンドに、それも百発百中で出来るギタリスト…というのはあまりいないと思います。
(音を変えることはだれでも出来ますが、例えばネック外す度に違う音になっちゃったら、むしろデメリットなわけで...。)
でもそれをどんな人でもそれを可能にするのが、このジョイントなんですね。
非常に作るのに手間がかかるジョイントですが、このジョイントならユーザーはレンチ一本あれば簡単に調整出来ちゃいます。
下手したら曲ごとっていうか曲中に変えることも出来るかも。そんなコトする人いないでしょうけど。笑
本当に微々たる、15度くらいでしょうか。
それくらいで変わるんですよね。
ただ、そこをいじらないといけないわけではなく、好きな状態を選べるというだけで、いじらないとしても、丸く加工されたヒールのおかげで、ハイフレットが非常に弾きやすいんで魅力的だと思いますよ。
さて、hydra "classic"ということでノーマルなhydraと違うのは二つ。
ボディトップにメイプルが貼ってない。
ここはコストダウンという意味でも、あると思います。
実際、アルダー2pでも結構いい感じです。
しかしもう一つ、ペクがクルーソンタイプのロックペグ。
これが、結構大きい。
比重が随分違うので、サスティーンと立ち上がりにかなり影響があるのですが、hydraにモダンさを求めてる自分としては、あまり好きになれないポイントです。
逆に、ビンテージライクな王道ストラトサウンドに寄せながら、モダンな操作性や音作りは幅広く、ということであれば、非常に魅力的なのではと思います。
こういった、相反する要素を、高いバランスで融合、というのはもしかしたらfreedomのテーマの一つなのかもしれませんね。
お次は、セットネックの、RR。
イメージとしては、レスポールのリファインモデルだと思います。
仕込み角を剛性を下げる方向で調整しているという設計。
テイルピースで弦の張り自体は変えられるわけですが、
そこでいじれない部分を設計段階で調整してるんだなぁと思います。
というか、ギターを共鳴体として考えた時に、なるべく角度がない方がいいというのは言われてみれば、と思いますね。
そのせいで弦の張りが無くなってしまっては意味無いですが、このギターは全く問題ありません。
剛性?と思われるかもしれませんが、例えば、ピッキングした時の弦の感触。これがずいぶん違います
剛性が高いとパキンと。剛性が低ければフニャンと。ちょうどよければ、適度に吸い付くように。
弦のゲージも、チューニングが同じでも、そういったことが可能なのです。
今回弾かせてもらったのはセミホローのモデルと、ソリッドのプロトタイプモデル。
ソリッド…いいですね。
やっぱいいセットネックはソリッドの、低音弦ローフレットのタイトさが一番美味しいと思ってるので、ホローよりソリッド派です。
そして、voodooピックアップ。
タップコントロール付きで、ハイブリッドハムと比べるとシングルまで振り切っちゃうと流石に細いですが、そこも調整できるからそこまで問題なし。
voodooの音好きなんですよねぇ。
先日の新宿で弾いてトリコになりました。
自分のセットネックに載せたい。
ホロウモデルも、結構面白いです。
小さいボディの箱物が欲しい、なんて言う方はちょっと選択肢に入れてみてもいいかも。
是非、弾き比べてみてください。
今は新宿ロックインなら、何本か在庫してると思います。
最後にpepperの、グレッチのフィルタートロン系ピックアップ(tv jones)の載ったモデル。
Pepperに関しては、アホほど弾き比べまくった経験があるのですが、このピックアップだとどうかな?ということで。
やっぱpepperはいいですね。
僕も一本、チェンバーホロウで、マホガニーネックのテレキャスターを作ったわけですが、やっぱこのギターも新しいギターのバランス感覚を生み出した名作だと思います。
フィルタートロン自体は、そんなに感じませんでしたが、もしここにプラスαでビグスビーを載っけられたら...なんて思っちゃいました。
と、試奏日和的なところはここで終わり。
今回、担当して頂いたのは、小林さん。
改造や修理の担当者さんということでした。
話の中で
「昔、池袋のイケベ楽器にFender custom shopのストラトが何本か入って、そのうちの一本をFCGRが電装改造したのありましたよねー」
なんて話題が出まして。
どういう改造かというと、ロータリースイッチがついていて、バリトーンスイッチ的になってるんですが、その音が幅広く...パッシブなのにゴロゴロ雰囲気が変わるという代物。
衝撃でした。
尚且つ、FCGRのHPから、隠しページがあってそこにしか商品紹介が載ってない。
しかもその商品紹介に、アッセンブリの写真が載っているという。
なんかね。すごいんですよ。ごちゃ!っと。良くこんなの作る人が居るなぁ...と。
しかも、あれがよく普通のストラトのキャビに収まってるなと。
少しでもひっかかって素子の足とか曲がったら接触不良とかになっちゃうんじゃないかなくらいの。
物凄い密度でしたよ。
で。
「あれをやった方ってどんな方なんですか?」
と聞いたら。
「あ、あれは僕ですよ」
とのことで。笑
びっくりでした。
もうやめてしまった、イケベの店員さんと、小林さんの間でノリノリで作ったらしいんですが、
まぁ二度とやりたくないシロモノだというのは、どちらの話からも。笑
なんであんなことが出来るのか...と聞いたら、さわりだけ話を聞かせてもらって。
すごいですね。うん。
今やもう売れてしまって、その写真も見てもらえないのが残念ですが。
でも、そういった改造というか、ほしい音があったりしたらご相談くださいと、言っていただけました。
皆様も、是非。
さて。
FCGRのすごいところはやはり、一流の職人が集まっている、というところだと思います。
木工、電装、塗装、調整、分業していく中で、個々の能力を最大限に活かしながら、
研鑽を重ねて、お互いに影響しあったりしているのだろうなぁと思います。
工房というとマスタービルダーがいて、その作業の補助的な職人が何人か、
と言うスタイルが多いと思いますが、FCGRはそれぞれの専門家、というのが非常に魅力的ですね。
一人の製作家が0から100まで作るギターも素晴らしいのですが、
ある程度の本数を作り、品質を高いレベルで安定させる、
というのはFCGRの最大の強みだと思います。
また、ステンレスフレットを代表とする、パーツの自社商品開発もアツいですね。
欲しいレベルのものが、世の中になければ作ってしまうという。素晴らしいです。
いずれ、工房の見学もさせていただきたいものです。
現在、facebook上でイケベ楽器が発注しているHydraの制作風景なんかが見れるので、
こういったもので補完しようと思います。
あとは、FCGRのfacebookページも、いろんな写真が見れますよ。
ショールーム自体は、予約制ということもありじっくりとお話が出来る空間なので、是非遊びに行ってみてください。
若い人には少し敷居が高く感じるかもしれませんが、そんなことはないと思いますよ。
アンプも何種類か揃っていて、時間がなくて弾けませんでしたがエフェクターなども、ひと通りありました。
とにかく気になった方は、近くのHydraを探して、弾いてみてください。
あなたのギターの見方が変わることはまず確実です。
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